昭和九年発行 邦樂 ビクターレコード 總目録 -1(表紙、序言、定價表、オルソフォニック)
昔の資料を整理していたらこんな物が出てきました。
昭和九年発行に発行された「邦樂 ビクターレコード 總目録」です。
何回かに分けて内容を紹介します。
第1回目は表紙、序言、定價表、オルソフォニックについてです。
オルソフォニック吹込 ビクターレコード 總目録 邦樂 昭和九年
かなり傷んでいますが、何とか判読することができます。
型録の見方
型録の見方
一.曲目は各曲種に依り、假令ば、管弦樂、童謡、流行歌の如き項目に分類して
一括してあります。
二.次に各曲種中のレコードの配列は、各演奏者名(配列イロハ順)により、同じ演奏
者のものは一括して番號順に配列致しました。 但し、この配列は、多数のレコー
ドを吹込まれてゐる演奏者のみに限られてゐて、吹込數の少ない演奏者のものは、
そのレコードのA面の演奏者名を規準とせるイロハ順の配列中に、組合せてあり
ます。
オルソフォニック吹込 ビクターレコード 總目録 邦樂 昭和九年
定價表
定 價 表
(邦樂レコード)
藤原レコード … … 10吋赤 一枚に付 … … ¥2.00
5800 … … … … 〃 〃 … … ¥2.50
5900 … … … … 〃 〃 … … ¥3.00
13000-13500 … … 〃 〃 … … ¥2.00
J1000 … … … … 12吋赤 〃 … … ¥3.00
12100 … … … … 12吋白 〃 … … ¥2.50
*11300-11400 … … 10吋黒 〃 … … ¥1.50
*50000-50197 … … 〃 〃 … … ¥1.50
50242-52000 … … 〃 〃 … … ¥1.50
J10000 … … … 10吋青 〃 … … ¥1.00
(*印は舊吹込み)
ご註文の節は 必ず レコード番號を ご使用下さい
一度 御買上になりましたレコードは お取換 叉は
御取引 致し兼ねます。
ビクターの蓄音器針定價表
鋼 鐵 針 エキストラ・ラウド (約100本入 1袋) ¥0.25
(約200本入 1鑵) ¥0.50
フール・トーン (約100本入 1袋) ¥0.25
(約200本入 1鑵) ¥0.50
ハーフ・トーン (約 75本入 1袋) ¥0.25
(約150本入 1鑵) ¥0.50
ソフト・トーン (約100本入 1袋) ¥0.25
タングステン針 エキストラ・ラウド ( 8本入 1鑵) ¥0.50
フール・トーン ( 8本入 1鑵) ¥0.50
ソフト・トーン ( 8本入 1鑵) ¥0.50
竹 針 … … … … … … ( 50本入 1袋) ¥1.00
クロミウム 針 … … … … … … ( 6本入 1袋) ¥1.00
此の定價表に在る各種レコード及針の定價は正價でありま
して絶對に値引きはいたしません。ビクター製品販賣店は
此の條件を厳守することになって居ります。右御注意まで。
御注意
一、ビクター・レコード文句紙には、必ずレコード検査番號がスタンプで押
してあります。この番號を故意に抹消し、叉は切抜いたものは完全なる
良品たる事を會社は保證致し兼ねます。
一、ビクター器械にして、器械番號が抹消され、叉剝取られたものも同様に
保證 致し兼ねます。右御承知の上お買上の際は、此のレコード検査番號
叉は器械番號の完全なるものを御購め願ひます。
序言
序言
日本ビクターは、創立以来茲に星霜を經ること八年、この總目録も第七巻を編纂することになりました。扨我が新工場の施設や經營の組織も全く整備いたしましたにつれて、この總目録も亦大いに其編纂に努力いたしましたが、何分年々增加し行く廣汎なる曲種曲目の配列は複雑にして叉至難のため、十二分の満足を願へますや否やを惧れてをります。併し年を重ねるに從ひ、新一新、完成の域に達したく念じてをります。幸に大方博雅の御聲援を賜らば幸福に存じます。
曲種の分類や配列につきましては、成るべく繁雑に流れざるやうに努め、演奏者及指揮者の傅記なども、すべて改稿叉は新たに增補いたしました。斯くして追々ビクターとしての統一した規準を作り、樂界の指針にまで進めたき念願でございます。
蓄音器の世界は前途洋々として將来を期待さるゝこと萬々であります。茲に於て我がビクターも世界に誇る新工場に據って、レコードに、蓄音器に、ますます活躍せんことを劃策してをります。何卒永く、深く、切に御愛顧を賜るやう、お願ひ申し上げます。
日本ビクター蓄音器株式會社
世界各国に於ける日本ビクター姉妹會社
日本
横濱
米国 米国
カムデン附属工場 カリフォルニア オークランド
米国 ブラジル
カリフォルニア ホリーウッド サンパウロ
智利 カナダ
サンディアゴ モントリール
米国
カムデン
アルゼンチン 伊太利 英国
ヴィエノスアイレス ミラノ ヘイエス・ミドルセックス
独逸 仏蘭西
ノヴェヴァス バイ ポッダム ノジナン
西班牙 チェッコ スロヴァキア
バルセロナ アウシック
印度 オーストラリア
カルカッタ シドニー
オルソフォニック吹込法
オルソフォニック吹込法
オルソフォニックとは、オルソフォニー即ち、「正確に原音を再生する技術」という原語を形容詞として用ひたのであります。オルソフォニック吹込法は、我社の關係会社なる米国ビクター会社に於て、多年の苦心研究の結果、終に一九二四年に完成され、現在は世界中に網を引いて居る各地のビクター蓄音器会社で使用されて居ります。
ラヂオ及びアンプリファイアーの出現する迄は、すべてレコードの吹込み法はアコウスチック即ち喇叭吹込法によって行はれて居りました。即ちメガホーンの形をした金属製喇叭の後端に、ガラス製薄膜を張りつけたサウンド・ボックスを装置し、音は此の喇叭から薄膜に集中されてこれを振動させ、その振動は一本の針に傅えられて回転する蝋盤の表面に音波を刻み込むという仕掛けでした。然れどもこの喇叭式吹込法は、既に舊式として一般に廃棄せられ、現在は之れに代わって電気吹込法が採用される様になったのであります。 これには喇叭の代りにマイクロフォーンが用ゐられますが、マイクロフォーンだけでは勿論まだ用をなしません。これはただ電気吹込法の第一階梯でありまして、その外に諸種の手続きを經て、初めて電波が蝋盤に刻まれる順序となるのであります。つまりマイクロフォーン、アンプリファイアー、電気レコーダー及び蝋盤、これ等が電気吹込装置の諸階梯であります。
音の振動数は一秒間に一六回から二〇〇〇〇回位でありまして、その内樂器による音は最低一六サイクルから最高一六三八サイクルの音域にあります。人間の聲は最低音から最高音迄は一秒間約八〇サイクルから一二〇〇サイクル位迄で、普通の談話一一〇サイクルから二七〇サイクルまでの振動数の音であります。
舊式の喇叭吹込法ではこれ等の微妙な音波を完全に蝋盤に刻み込む事が出来ず、弱い音は全然刻み込まれない様な事がありましたから、其の原盤によって製作された音を再生する時に至っても、自然多くの欠陥があり、単に「似て居る」という程度に止り、所謂蓄音器らしい音即ち缶詰のような音になってしまうと云ふ次第でありました。然るに科学の進歩発達により発明された電気吹込法によりますと、先ず肉聲もしくは樂音を、マイクロフォーンが感取すると、其の音波は電波に変へられ、その電波はアンプリファイアーに傅って、任意の程度に增幅されます。その增幅された電波は、電気レコーダーに働き、ここで再び音波に還えされ、斯して回転せる蝋盤の上に音波の溝を印刻する様な装置になっております。
以上の様にマイクロフォーン、アンプリファイアー及びレコーダーを結合しさへすれば、直ちに優秀な吹込が出来るかといふに、必ずしもさうは行きません、それには叉独特の工夫が要ります。 「オルソフォニック吹込法」と称して現にビクターが専用せるものの如きは、この工夫に關する最高の研究の精華にして定評あるもので、凡そ人間の聴覚の刺戟域に対しては、最低より最高に亘る一切の音波を印刻して余蘊なき完璧の機能を具へてをります。 而も此の機械を取扱ふ技師は、凡て電気学、音響学、音樂に精通せる優秀な技術家揃ひであります。斯るが故に、我社のレコードは、聲樂、器樂、其の他凡ゆる発音体が持つ資質の特徴を完全に吹き込んで、再生する次第であります。
オルソフォニックレコード
オルソフォニックレコード
オルソフォニックレコードと申しますのは、前記のオルソフォニック吹込法に依って、完成された蝋盤の表面に一種の混合塗料を塗って電導體となし、我社独特の鍍金法に依り「プレス」用メトリス(原盤)を作ります。まづ原盤はA面を上方に、B面を下方にして、特殊の型臺に取付けます。此の上下兩面の型臺は、レコード刻製に必要な水壓加熱及び冷却の諸装置を具えてゐる特殊の機械に接續してゐます。此の型臺に取付けられた上下兩原盤の表面中央に、所要のレーベルを置き、其の上に加熱されて軟らかになったレコードの材料を載せ、さうして置いて上下二つの型臺を合せて壓搾機に押込み、同時に水壓力を働かせます(レコード一枚に加へられる壓力は約九十噸)。水壓が加えられるや直ちに冷却装置に冷水が廻って来てレコードが冷却されます。斯くして合はされた型臺は、自動的に開き、茲にレーベル附のレコードが出来るのであります。斯くして出来上がったレコードを一枚毎に厳密なる検査を行ひ、及第したものが、完全なるビクター・レコードとして市場に提供されるのであります。ビクター・レコードの原料は、極めて精選されたもので、レコードの表面も中身も、全然同一の材料を以て製作されて居りますから、其の品質の優良なる点、且つ耐久力の点に於ては、絶對に他の追從を許しません。
今回はここまでです。
感想
そういえば昔家にビクターの蓄音器がありました。洋楽は殆どなく、歌謡曲や浪曲が多かったような気がします。もしかしたらこのカタログを見て購入していたのかもしれません。1曲聞くたびに針を交換していました。
レコードの定價表を見ると1枚2円から3円となっています。
日本銀行調査統計局「企業物価指数」をもとに、今の価格と比較してみました。
昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか? : 日本銀行 Bank of Japan
「企業物価指数(国内企業物価指数)」:国内において企業同士で取引される「財(モノ)」の価格
<昭和9年(1934)~11年(1936)平均=1に対し 令和元年(2019) 698.8
ということは昭和9年当時一枚2円したレコードは現在価格だと1397.6円に相当することになります。SP盤でAB面2曲とすればかなり高いものだったようです。
次回以降は目次、本文を見ていきます。
以上です。
レコード 總目録-1 ⇨ 次ページ
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。